日本データマネージメント・コンソーシアム

PICK UP

【Vol.139】石原産業株式会社・手嶋 信介さん 業務・デジタル・人をつないでデータを活かす組織へ

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、石原産業株式会社・手嶋 信介さんです。

生成AIの急速な進化により、企業でのAI活用が一気に身近になりました。その一方で、「AIを導入するだけで何かが変わるのではないか」という期待が先行し、何のために活用するのか、そして業務をどう変えたいのかという議論が置き去りになっている場面もあるように感じます。

私はAIを活用するためには、まず業務を見直し、データを整えること。そして、それを実現するには人や組織の変革が欠かせないと考えています。変えるべきなのは、業務の進め方だけでなく、AIやデータ活用に向き合う私たち自身の意識や行動なのかもしれません。今回は、これまでの経験や現在の取り組みを通じて感じていることをご紹介したいと思います。


●技術が進化しても、変わらない課題

前職のSIer時代では、さまざまな業界/事業の方々と一緒にお仕事をさせていただき、IT導入のお手伝いをしてきました。中でも、機械学習や深層学習を活用したシステムを実装するプロジェクトや、データ分析基盤の構築に関するお話は多く、企業のデータ活用への期待は、約10年前も今と変わらず高かったように記憶しています。

一方で、技術的には優れたものを導入できても、それが実際の業務にどこまで定着し、投資に見合う効果を生み出せているのか、外部から各社のプロジェクトに関わる立場として、正直なところ、疑問を感じることも少なくありませんでした。

振り返ると、部門やシステムごとにデータが分断されていることに加え、従来の業務の進め方や組織の壁など、技術だけでは解決できない課題が背景にあったように思います。その経験から「データ活用には技術だけでなく、業務や組織のあり方にも目を向ける必要がある」と感じるようになりました。

昨今は、生成AIによって、以前よりも手軽に業務でAIを活用できるようになりました。しかし、必要なデータが整っていなかったり、業務の進め方が変わらなかったりすれば、期待する効果はなかなか得られません。これは、以前の機械学習や深層学習の時代から、根本的には変わっていない課題ではないでしょうか。AIの技術が進化した今だからこそ、AIをどう使うかだけでなく、AIを活かせる業務やデータの環境をどう作るかが重要だと感じています。


●データマネジメントと業務改革への取り組み

現在、私はデジタル変革推進部という部署で仕事をしています。当部では、当社および関係会社を含めたISKグループの中長期経営計画に沿った全社DX戦略の策定・推進を担い、各部署の業務改革の推進、AI利活用の啓発、さらにはIT部門と連携したデジタル基盤の高度化などに取り組んでいます。

その一環として、データマネジメントにも着手したところです。まだ取り組みを始めたばかりですが、データ整備や品質管理、ガバナンスのあり方を検討しながら一歩ずつ進めています。

まずは、全社にどのようなデータが存在し、誰が、どのように管理・利用しているのかを可視化するところから始めています。その上で、データの管理責任や取り扱いルールを明確にし、安全に管理できる環境を整えていく方針です。必要な人が必要なデータを安心して活用できる状態を作り、データに基づいて議論し、意思決定できる組織へと変わっていくことが、私たちの目指す姿です。

そのためには、データを整えるだけでなく、データを活用する側の業務や組織も変わっていく必要があります。当社では、こうした考え方ともつながる全社的な業務改革にも力を入れています。各部門から自部署の業務改善を推進する「DX推進リーダー」を選出し、現場主体で業務課題の洗い出しや業務プロセスの見直しを進めています。2025年度には、全社で約600件の業務課題が挙がり、各部門で改善活動に取り組みました。

さらに、活動の成果や経験を共有するため、全社イベント「ISK業務改革Day」を開催しました。当日は社長をはじめ全役員も参加し、ポスターセッション形式で、役員や上長、DX推進リーダーが立場を越えて意見を交わしました。取り組みの苦労話や工夫、周囲の巻き込み方など、会場のあちこちで会話が弾む、活気あふれる イベントとなりました。

こうした活動を通じて、デジタル技術の導入自体ではなく「何を変えたいのか」「何のために変えるのか」を考える大切さを改めて感じています。まだまだ道半ばですが、業務改革とデータマネジメントを両輪として取り組みを進めています。


●チェンジマネジメントの必要性──組織の変革は一人ひとりの意識の変化から

業務改革やデータマネジメントを進める中で感じるのは、組織を変えるためにはそこで働く一人ひとりの意識や行動が変わることが欠かせないということです。こうした考えから、当部でもチェンジマネジメントについて学ぶ機会を設け、私自身も「Prosci」という団体のチェンジマネジメント資格認定プログラムを受講して、認定資格を取得しました。

このプログラムでは、実際のプロジェクトを題材に、組織として変革を進めるための知識や手法を学び、実践に向けたチェンジマネジメントプランを作成しました。その学びの中で特に印象に残ったのが「変革の必要性を理解することと、自ら変わりたいと思うことは別である」という考え方です。

新しいシステムや仕組みの必要性を頭では理解していても、実際に自分の業務を変えたいと思えるかどうかは、また別の話です。一方的に変革を求めるのではなく、現場と対話して納得感や小さな成功体験を積み重ねながら、一人ひとりが自ら変わろうと思える環境を作ることが大切であると同時に、とても難しいことだと感じています。


●おわりに

当社では社員一人ひとりが主体的に考え、挑戦し、新たな価値を生み出せる組織への変革を目指しています。

しかし、現実にはまだまだ多くの課題があります。データ活用や業務改革の取り組みも十分に進んでいるとはいえず、変革に対する考え方や温度感にも従業員の中でも大きな差があります。また、業務や組織をどう変えるかという議論よりも、ツールやシステム導入の思考が先行してしまう場面も少なくありません。どれほどAIが進化しても、業務プロセスとデータが整わなければ、その効果は限定的です。

そして、何よりも大切なのは、そこで働く人たちが自ら変わろうと思えるかどうかが今後のポイントだと思います。変化のスピードがますます速くなる中で、誰かが変えてくれるのを待つだけでは、時代の変化に取り残されてしまいます。

だからこそ、社内の部門や専門領域の壁を越え、積極的に社外にも目を向けながら、多様な人や知識、価値観とつながり、自ら考え、挑戦し、行動することが重要だと考えています。一人ひとりが持つ力や可能性を引き出し、人と組織をエンパワーしていくことが私自身のミッションであり、当社でDX推進を担う従業員にとっても大切にすべき行動指針だと考えています。

皆さまの会社では、データマネジメントやAI活用を進める上で、どのような課題に直面し、どのような工夫をされているでしょうか。同じような悩みを抱える企業の皆さまはもちろん、先進的な取り組みを進められている企業の皆さまとも、ぜひ情報交換し、一緒にいろいろなことにチャレンジできればと思っています。

私自身もJDMCの活動やイベントに積極的に参加しながら、皆さまと一緒に面白いことにチャレンジしていきたいと思います。これからもどうぞよろしくお願いします!


手嶋 信介(てしま しんすけ)
石原産業株式会社 経営企画本部 デジタル変革推進部
ビジネス変革グループ 兼 AI・データ活用グループ グループリーダー

大学卒業後、旅行代理店グループに入社、情報システム子会社およびグループ本社IT企画で業務。その後、独立系SIerへ転職し主にプロジェクトマネジメントやソリューション開発に携わる。2020年に石原産業入社。現在は全社DX推進を担当。

石原産業株式会社 1920年創業の総合化学メーカーhttps://www.iskweb.co.jp/

RELATED

PAGE TOP