JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、キヤノンITソリューションズ 株式会社 山岸 巧さん です。
皆さんこんにちは。私はJDMCには2021年6月に入会しました。以来、MDMとデータガバナンスの研究会をはじめ、データマネジメントについて日々勉強しております。
私が所属する部門では、データガバナンスからデータ統合、分析・活用まで、データマネジメント活動全般に関するご支援を行っており、特に「データ収集・格納」および「データ分析・活用」の領域に注力したサービスを提供しています。
私自身はノードコード/ローコードおよびETLといった分野で、以下のような支援内容に関わることが多いです。
・「データ収集・格納」領域:データレイク・データマート構築やETLツールを活用したデータ連携開発
・「データ分析・活用」領域:CX(カスタマー・エクスペリエンス)向上に向けた顧客分析から、デジタルマーケティング施策の支援
今回のコラムでは、データマネジメントの観点から、ノーコード/ロードコードおよびETLツールの特長を紹介しつつ、活用するメリットについて書きたいと思います。
●ノードコード/ローコードツールによる高速開発の実現
「ノーコード」「ローコード」とは、プログラミング作業においてソースコードを書くことなく、もしくは最小限のソースコードの記述でアプリケーションやシステムを開発するための技術です。
ノーコードとローコードの違いはソースコードを記述する量で、ノーコードは基本ソースコードを書かない開発であり、ローコードはソースコードの記述を最小限に抑えた開発となっています。
ノードコード/ローコードツールを導入するメリットとして、以下のような点があり、多くの企業で採用が進んでいます。
・直感的な開発、素早いリリース、自動生成による品質の均一化等による開発期間の短縮
・システムを利用するビジネス部門と開発部門との共創型で開発ができる
・ビジネス環境の変化に柔軟に対応したシステム構築が可能
●ETLツールを活用したデータ連携開発のトレンド
続いてETLツールについてご説明します。ETLとは、Extract(抽出)/Transform(変換)/Load(取込)の略称で、以下のような処理の流れを指します。
・Extract:データソースからデータを抽出するプロセス
・Transform:抽出したデータをビジネスの要求に応じて変換・加工するプロセス
・Load:変換・加工済みのデータをターゲットとなるシステムやファイルにロードするプロセス
ETLは組織の内外に散在するデータを抽出(Extract)し、目的に応じて変換(Transform)した上で、その先にある格納先に有用な情報として取り込まれます(Load)。
また、ETLのバリエーションとしてELTという考え方があり、ELTでは、データは変換(Transform)される前に抽出(Extract)されて取り込まれます(Load)。
昨今は、ロード先のデータベースやデータウェアハウス、データレイクで、大容量のデータを高速で処理できるようになってきていることもあり、ETLとELT、どちらかの連携ケースが優れるということはありません。 ETLツールもETL/ELT双方のケースに対応できることが多く、状況に応じてデータ連携フローのケースを検討することになります。
ETL/ELTのケース検討結果を踏まえ、ツールを活用してデータベースなど既存のIT資産を生かし、個別に最適化されたシステムを最小限の変更で、顧客/データを軸に全体最適を図るのです。
●ツールが多機能化し、データマネジメント支援にも有用に
ここまで、ノーコードローコード/ETLツールについてそれぞれ説明してきました。これらのツールは「時間あるいは人的なリソースを、本来、取り組みたかったデータマネジメント分野に注力できる」という効果を目指しています(ツール導入に伴うコストとのトレードオフにはなりますが)。
私の部門でも、開発や保守の業務を通じて、データマネジメントに関する以下のような課題をご相談いただくことも多くなっています。
・データガバナンスの強化、カタログ整理やメタデータの管理
・データ統合基盤、データモデル/マートの整理、データレイクの沼化(スワンプ化)の防止
・データ連携について、データの整流化やバケツリレーの防止、データリネージ(データが流れる始点と終点や経路)の管理
今はノーコード/ローコードおよびETLツール自体も多機能化しており、トレンドとして、データマネジメントの各領域をサポートする機能を備えたものも増えています。
ツールによっては機能一覧のカタログ化や、プログラムやデータ連携の設計書を自動生成でき、メタデータの管理やデータの可視化にも役立てることができます(以上のようなデータマネジメントに役立つ機能についても、別の機会にご紹介できればと考えています)。
効果的なツールの活用方法について考え、データマネジメント活動に役立ててみてはいかがでしょうか。
山岸 巧(やまぎし たくみ)
キヤノンITソリューションズ 株式会社
データマネジメント開発部
データ活用プロジェクトに関する提案活動、自社ノーコード・ローコードツールでの開発、その他ETLツールの導入やデータ連携開発に従事。