日本データマネージメント・コンソーシアム

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No.1 赤津素康氏「転換点を迎えたデータマネジメント」

本コラムでは、JDMCの諸活動にご指導ご支援くださっている理事の方々の“思い”をお届けします。今回は、NEC主席主幹の赤津素康さんからのメッセージです。

「転換点を迎えたデータマネジメント」

 
一昨年度より理事を務めておりますNECの赤津です。
30年以上にわたってソフトウェアのビジネスに関わってきました。特にデータマネジメントの分野で言えば初期の仕事はネットワーク型のDBMSの開発でした。以来、リレーショナルDBMS、オブジェクト指向DBMSの開発にも関わりました。
 
製品開発だけではありません。銀行の基幹系データベースシステムの設計・構築など、利用サイドのプロジェクトにも参画しました。こうした利用側プロジェクトを通じて実感したのは、「情報システムは人間を含めた現実の”業務システム”の裏側に表裏一体で存在するもので、裏表を仲介するのはデータである」という事実です。
 
システムの主役は常にデータ(情報)。「システムを理解しようとするなら、データから」という思いは、その後確信に変わりました。しかしながら90年代前半までに見られた、データディクショナリ/ディレクトリシステムや、データ中心設計(DOA)が広く普及するに至らなかったように、多くの企業・組織の情報システムは、データを中心に統合され柔軟に利活用できるまでには進化していないと痛感しています。
 
今、情報システムは大きな転換点に直面していると感じます。橋や水道など様々な社会インフラが老朽化し再構築の時期を迎えているのと同様に、既存のシステムの多くが再構築を迫られているということ。同時にビッグデータやクラウドに代表されるITの進歩によって、これまでにない付加価値を提供しうる、新しいシステムが求められているということです。すでに存在するモノやお金の流れをいかにIT化するかといった「ITが主役」だった時代から、モノや人、集団や社会の動きをいかに掴み、予測し、事業にするかといった、「事業化が主役」の時代を迎えているのです。本来、目指すべき方向への回帰と言えるかもしれません。
 
その際、よく言われる次のような象徴的な課題があります。
 
●既存のシステムを再構築したいが、ドキュメントやソースコードが揃っていない。システムを知る技術社、開発者は退職しつつある。
 
●クラウド化が進行すればIT部門は、システムの構築・運用から解放される。サービスプロバイダやサービスブローカー、さらにはより業務や事業に直結した役割を担うべきである。
 
●ビッグデータの時代、内部に活用可能なビッグデータはあるのか。オープンデータなど外部のデータをどう取り込むべきなのか。そもそも、ビッグデータ処理でどんな付加価値の獲得を目指すのか。
 
まったくバラバラに見える課題ですが、これらを解く共通の鍵は、やはりデータマネジメントです。データこそが現実のシステム(業務、事業)とITシステムを仲介するからです。つまり、どんな意味を持ったデータが、どこにどんな形で存在するかを把握することが、既存システムを再理解する出発点。一方、業務部門は、あるいは経営はどんなデータを欲しているのか、何が見えていないのかを理解することが、価値創出に向けた出発点なのです。例えばビッグデータによる付加価値創造。企画・マーケティングといった業務側と技術を理解するIT側が、データ(情報)を介してコラボレーションすることで生まれるものだと考えています。
 
データマネジメントは今、ビッグデータの下で改めて脚光を浴びています。だからといって、これまでに十分普及しなかったデータマネジメントが、何もしないままで普及するのかという疑問が出てくるのは当然です。そもそも、これまでのデータマネジメントは構造化データを主な対象とし、非構造データを中心に全件をあるがままに扱おうとするビッグデータの本質とは相容れないという見方もあります。
 
前者に関しては、業務側とIT側が再度向き合わざるを得ない今が大きなチャンスと言えます。データマネジメントを両者の共通言語として確立できれば、社会的意義も大きい。JDMCの活動にも両サイドのメンバーを巻き込む必要があるでしょう。後者に関しては、構造化データがビッグデータ処理でも重要な役割を果たすと考えます。分析の重要な軸になるでしょうし、分析結果を事業活動に繋げるには構造化データが必須です。一方で、守備範囲を拡大し非構造データも含めたより“柔らかい”データマネジメントを確立する必要もあるでしょう。
 
今、訪れているのは、なかなか陽の目を見ないデータ運用(鮮度・品質の維持)の重要性まで踏み込んで認識していただく、最後のチャンスと言えるのではないでしょうか。3年目に入ったJDMCの活動は、こういった大きな役割を担っているとも言えます。微力ながらも積極的にJDMCの活動に取り組みたいと考えています。
 
 

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