報道発表資料
2018 年 2 月 28日
一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)
JDMC、2018年度データマネジメント賞を決定
~大賞/特別賞/データ統合/データ基盤/アナリティクス/先端技術活用など各賞を発表~
一般社団法人 日本データマネジメント・コンソーシアム(略称:JDMC、会長:栗島聡)は、他の模範となるデータマネジメント活動を実践している企業・機関などの中から優秀な取り組みを選定するデータマネジメント賞の受賞者を決定いたしました。第5回目となる今回は、日本電信電話株式会社が大賞を受賞したほか、5つの企業・機関が各賞を受賞しました。
各賞の選定にあたっては、JDMC 運営委員会内に審査委員会を組織し、評価の上、決定いたしました。この賞を通じ、様々なデータや情報のマネジメントに関する社会的認知を高め、企業・機関などでデータマネジメントを実践する人や組織の活性化を促進し、日本企業・組織の競争力強化へ寄与するものと JDMC では考えております。
下記の通り、JDMC が2018年 3 月7日に主催する「データマネジメント 2018」にて表彰式を行い、賞の授与を実施する予定です。
記
<表彰式の開催>
日時:2018 年 3 月7 日(水) 9:35‐9:50
場所: 目黒雅叙園 (目黒区下目黒 1-8-1)
※JDMC 主催のカンファレンス「データマネジメント 2018」のタイムテーブルにて実施
受賞企業
賞名 | 受賞企業名 |
大賞 | 日本電信電話株式会社 |
特別賞 | 金融EDIにおける商流情報等のあり方検討会 (経済産業省・中小企業庁) |
データ統合賞 | 株式会社村田製作所 |
データ基盤賞 | 新日鐵住金株式会社 |
アナリティクス賞 | 学校法人京都外国語大学 |
先端技術活用賞 | きゅうり農家/組込みエンジニア 小池誠 |
賞の説明
賞名 | 説明 |
大賞 | データマネジメント活動において、特筆すべき取り組み・成果を出した企業・機関などで、この取り組みが現状および将来にわたり他の模範となると認定された場合に授与いたします。 |
特別賞 | 既存の賞の枠組みにとらわれない、卓越したデータマネジメントの取り組みに対し授与いたします。 |
データ統合賞 | これまで困難とされてきた「マスターデータの統合」に果敢にチャレンジし、成果を上げた企業・機関に授与。 |
データ基盤賞 | データ分析における基盤構築にあたり、システムだけでなく組織間の連携も含めて著しい成果を上げた企業・機関に授与します。 |
アナリティクス賞 | データ量が劇的に増加する中、業務システム、モバイル・センサーや Web アクセスログなどが生み出す膨大なデータを分析し、実際のビジネスの現場で活用することにより多大な成果を上げた取り組みに対して授与します。 |
先端技術活用賞 | 先進的な理論や技術に対していち早く試み、ノウハウや成果を公開するなど、他の模範となる取り組みを実践する企業・機関に授与します。 |
受賞理由
データマネジメント大賞 日本電信電話株式会社
グループ経営情報見える化基盤の構築
日本の大企業は一般に、多くの関連会社や子会社(以下グループ会社)を擁している。しかし同じグループ会社にも関わらず情報システムは個別に構築・運用してきており、当然、製品情報や顧客情報、社員情報といったデータを共有できていないケースが大半を占める。例えば海外のグループ企業に有能な人材がいても活用できない、同じ顧客に別々のグループ会社が提案するなど、”VUCAワールド”と呼ばれるほど激変する今日の経営環境において、それがもたらす副作用は極めて甚大である。
こうした中、日本電信電話株式会社(NTT)グループは、グループ横断でのデータ(コード)標準化、データの鮮度維持、NTTグループ内でのデータ有効活用などをコンセプトに掲げ、2015年10月に開発に着手。マスターデータの標準化などを実施した上で、2016年11月に可視化の基盤を稼働させた。一貫性を維持するための専門組織として「コードメンテナンスセンター」も設置している。多種多様なデータマッピングやコード変換を伴う困難な取り組みであり、必然的にプロジェクトは現在も進行形である。それでも多くの企業の範となり得る取り組みであることは間違いなく、よってデータマネジメント大賞に値すると評価する。
特別賞 金融EDIにおける商流情報等のあり方検討会(経済産業省・中小企業庁)
中小企業のための金融EDIの取り組み
日本の中小企業における課題の1つがEDI(電子データ取引)が普及していないことである。取引先との受発注において電話や手書きのFAXが多く利用され、金融機関の融資の申し込みや支払い処理なども手書きの伝票が依然として多数使われている。そのため例えば過去の取引履歴1つを参照するにも膨大なFAX文書から手作業で該当文書を探し出す必要があり、生産性の面で大きな負担がかかっている。蓄積したデータをビジネスに活用する基盤も存在しない状況である。
この問題に対し、「金融EDIにおける商流情報等のあり方検討会」(事務局は中小企業庁)は、小島プレス工業や武州工業といった高い問題意識を持つ中小企業を委員とし、解決の道を探ってきた。取り組みは今も道半ばであるが、一方でEDIでやりとりする情報として格納すべき商流情報を整理したほか、国連CEFACTに準拠した共通辞書を用いて中小企業EDIを実証する事業を実施するなど、一定の成果を得ている。JDMCはこの取り組みに大いに賛同するものであり、特別賞を授与する。
データ統合賞 株式会社村田製作所
データ統合によるビジネス分析基盤の実現
電子部品の世界的なトップメーカーであり、積層セラミックコンデンサーをはじめ、世界トップシェアの製品を多く持つ村田製作所は、いち早く1990年代より製造現場でのデータ取得と活用に取り組んできた。
現在では国内と海外多くの工場の間で、設計・材料情報や生産時点情報・装置・センサーデータの共有を行い、クロスファンクショナルチームで状況把握・分析・原因絞込み・改善提案まで会議時間内に行い、大幅な品質・歩留まりの向上に貢献している。また、データマイニング教育にも力を注ぎ、多数の社員が教育を受け、現在アシスタントでも分析が可能になり、データを扱う人材教育も大きな成果を挙げている。
現在、多く企業がIoTを使ったビッグデータの分析から問題特定・改善までのプロセスに取り組もうとしているが、いち早くIoTのデータを統合・活用し、品質・歩留まりの改善で成果を上げている村田製作所は、その先進的な取り組みが他の製造業の模範となる事を評価し、データ統合賞を授与する。
データ基盤賞 新日鐵住金株式会社
データを軸に経営統合に取り組む
2011年に経営統合を決めた業界大手の新日本製鐵と住友金属工業は、2012年10月に新たに新日鐵住金として発足した。会社統合を契機に業務プロセスの統合及び業務改革の推進を行い、2016年度までに人事、財務、購買、受注といった基幹業務について、業務プロセスの統合、それを前提としたシステムの統合を実現した。さらに2016年度以降、12に及ぶ製造拠点の生産管理システムについて、業務ノウハウの横展開・高度化を目的にベストプラクティスモデルを作成。それを活用したシステム刷新に着手した。
この日本有数の規模のシステム統合・刷新の前提であり、原動力となったのが、データ統合である。特に歴史も生産品目も個々に異なる製造拠点では、業務用語や取引先マスター、製品マスターデータなどが異なっていた。トランザクションデータも、それを処理・管理するシステムやツールもバラバラだった。現在ではデータ統合はもちろん、全社のプライベートクラウド基盤「NS-eSYS」を構築。ビッグデータ解析、IoT、AIなどを基幹系業務や生産管理業務等に応用する体制にまでしている。
単に稼働を優先したシステムの統合ではなく、業務プロセスの統合・標準化を前提に統合システムを構築したこと、および今後の新たなIotやビッグデータ等新規ITの活用も視野に入れた統合基盤の整備を推進している点で、今後の製造業の模範となることを評価しデータ基盤賞を授与する。
アナリティクス賞 学校法人京都外国語大学
DBサイロから脱却し分析環境を整える
創立70周年を迎えた京都外国語大学は、大学の研究や教育、財務、社会貢献など大学の諸活動に関する情報収集・調査活動を意味する「IR(Institutional Research)」に取り組んでいる。例えば学生教育の効果を定量的に調査して分析し、教育に関する自己評価、意思決定の精度を高める。
しかし多くの企業と同様、同大学も部署単位でシステム構築を進めてきたため、学内システムはサイロ化しており、組織横断による情報活用は困難を伴っていた。例えば分析のためのデータを10以上のデータソース側で個別に加工し、そこから抽出したものを分析していたため、分析には時間と手間がかかっていた。
この問題を解消するための仕組み作りに着手。データ連携ツールを介してPostgreSQLに個別システムのデータを格納し、オープンソースBIを使って分析を行えるシステム環境を整備した。現在では入学年度別退学者推移やTOEICスコア点数分布を詳細にクロス分析したり、高校別入学・就職情報といった情報をwiki形式で閲覧できるようにし、教育の現場で活用している。このようなIRの取り組みおよび分析環境の整備は大学の中でも先導的な取り組みであると評価し、アナリティクス賞を授与する。
先端技術活用賞 きゅうり農家/組込みエンジニア 小池誠
AIを使った個人農家の業務改革
自動車メーカーで組み込み系のエンジニアを経験し、現在は家族で営むきゅうりの生産に携わる小池 誠氏は、収穫したきゅうりの仕分け業務の負担が大きいことに気づいた。きゅうりの等級は9段階に設定されており、収穫したきゅうりを的確に仕分けして出荷する必要がある。そのすべてを小池氏の母親がひとりで行っていたのだ。もちろん専用の仕分け機は市販されているが、導入費用の面から個人農家ではあまり使われておらず、小池家も同じだった。「農家の本来の仕事はおいしい野菜を作ること」と考えた小池氏は、画像認識と機械学習を組み合わせて仕分けを自動化することを考えた。
用いたのはオープンソースの深層学習ツール「TensorFlow」(Google)やRaspberry Piといった安価なハードウェア。精度を上げるためにお母さんの技を撮影し、その画像を学習データとして用意して継続的にOK/NGの実データを大量に学習させた結果、十分な精度できゅうりを自動仕分けできるようになった。農家、しかも個人がこのような先端技術に取り組み、実用化したことは社会的なインパクトも加味して特筆されるべきである。これからの日本の農業、特に個人農家における先導的な取り組みであると評価し、先端技術賞を授与する。
以上
■本リリースに関するお問い合わせ先
一般社団法人日本データマジメント・コンソーシアム
データマネジメント賞 事務局 E-Mail:info@japan-dmc.org
東京都目黒区上目黒 3-12-24-306(ハートウエア 21 内) TEL:03-5721-4596
http://www.japan-dmc.org