(報告)データマネジメント2021:[E-6] ファッション×AI ~データ活用による靴業界の課題解決を目指して~

(レポート: 情報発信部会・日立ソリューションズ倉田公史)

 

[E-6] ファッション×AI
~データ活用による靴業界の課題解決を目指して~
株式会社ニューワールドカンパニー
代表取締役

小野 智広 氏
JDMCエンジニアの会メンバー
(株式会社Q’sfix デジタルビジネスイノベーションセンター)

牟田 光孝 氏

 

靴の市場はここ数年市場規模が横ばいの状況の中、靴のEC市場は急成長している状況にある。
この靴市場でのEC化率を向上していくためにも、靴売り場のデジタルシフトが急務な状態となっているが、世界の女性の8割が靴に関するトラブルを経験していたり、国やメーカーなどでのサイズ違いにより、ECサイトで靴を購入しても実際にサイズが合わずに返品されるケースが多い。そのため、靴市場でのEC化率が成長しても、それに比例して返品率がさらに加速する課題が懸念されている。

本講演で登壇された小野氏が代表を務めるニューワールドカンパニーでは、この課題を解消するために、JDMCエンジニアの会のメンバーでもあるQ’sfixの牟田氏と連携し、AIサイズレコメンドエンジンSureFITを共同開発し、お客様のECサイトでの靴購入に関する不安解消を実現している。

このSureFITは、店舗、自宅などでの3Dスキャン計測器による計測データをID化することで、ECサイトやスマホと連動して適切なサイズでのレコメンドを実現するツールであり、ECで足と靴のマッチング、足のサイズや特徴をベースとした履き心地レビュー、多くのデータからのレコメンドなどの特徴を持つ。SureFITの導入により、試着なしでの靴を購入する際の不安を解消し、そのレコメンド精度は約73%のレベルまで達しており、ECサイトでの靴購入者の約3人に1人が利用している状況にある。

今後は、ECと百貨店・SCをつなぐオムニチャネルを推進、さらにはAIとフィッテングデータを活用したトータルソリューションの展開を目指していると小野氏は語る。また、靴・ファッション業界のデータ利活用の未来として、パーソナルデータの取り扱いが企業から個人主導にシフトすることで、サービスのパーソナライズ化が進むと共に企業はデータの利活用により無駄な在庫を持つ必要がなくなる、さらには、共通ID化による個人主導のデータ活用が進むことにより業界を越えたサービスメリットを享受できると纏めている。

同セッションでは、SureFITを開発したQ’sfixの牟田氏が、データのレコメンド精度向上の取り組みについても語っている。靴のサイズは、足の長さ、足幅、足囲で決まっており、JIS規格においても靴の足長、足幅、足囲が表示されているが、実測の値はメーカーやモデルによって異なっており、表示されている足長、足幅、足囲だけでは十分なフィッティングができるものではない。

この問題を解消するには、靴の情報と足の情報を増やし、靴と足の状態をフィッティングさせる必要がああり、SureFITでは、足を3Dモデル化して計測し、性別、地域などによる足の形の統計データを収集すると共に、靴職人や実際に靴の製造・販売などに関わっている企業などと連携し、レコメンド精度を向上させるための取り組みを実施している。

この取り組みにより、複数の女性を対象として、色々な足の靴のレコメンドを実施したところ、用意したすべての靴が被験者にとって足にフィットするものであったとの検証結果を得ることができている。さらには、感覚の項目を追加し、足と靴のデータに関わる靴のフィット感だけでなく、そこにアンケートなどで収集した個人の好みを付加したレコメンドできるよう取り組みを行っている。

結論として、足長、足幅、足囲の値だけでは、履き心地の良い靴を選ぶことはできず、より詳細な足や靴の情報を組み合わせてレコメンドすることにより、履き心地の良い靴選びを手助けすることができ、さらに人間の感覚を加味することにより、より精度の高いレコメンドができると纏めている。