企業の実データを使ったJDMCエンジニアの会データ分析コンテスト、今年度は金融、小売と2部門にパワーアップして開催中。随時その様子をお伝えしていきます。(事務局・遠藤秀則)
開催背景
実データに触れてみたい
“データ活用・分析を身近に体験してみたい” そう考える技術者は多いと思いますが、そう簡単ではありません。身近にあるデータというと、オープンデータやサンプルデータですが、それらを駆使して分析しても、手応えや達成感が得られにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。データ活用のあり方は以前にもましてよりダイナミックです。技術者は、分析技能の向上に加えて、いまそこにある「リアル」に触れることが大切です。そう考えたJDMCエンジニアの会は、企業が保有する実データを活用したデータ分析コンテストを企画しました。実データ利用には様々な壁がありますが、JDMC会員企業の支援を得て実施する運びとなりました。参加者、提供企業の双方に多様な気づきが得られるコンテストです。
JDMCエンジニアの会「データ分析コンテスト」の特徴
企業が保有する実データを元に分析
本コンテストの最大の特徴は、企業が保有する実データを元に分析を進めていただく点です。またビジネス課題を主催者側から設定する形のコンテストではありません。参加者自ら考えた様々な視点でデータを分析し、新たなビジネスの法則や相関の発見などに挑戦していただきます。個人では普段扱うことができない実務的なテーマやデータ活用を通じて、分析の実践をはかれるほか、説明会や発表会においては、企業の実務担当者と対面でコミュニケーションが可能なので、オープンデータの利用だけでは味わえないリアルな環境で、緊張感と高揚感があります。
コンテストの流れ
1)金融部門:
対象データ | ・auカブコム証券 取引データ ・日本気象協会 ・オープンデータ(参加者任意) ※データは調整中につき変更の可能性があります。取引パターン分析や、各種のオープンデータとの相関関係などの新しい発見や、BIツール(Tableau)を利用した表現力を競います。 |
環境 | AWS上にBIツールとしてTableau。データはダウンロードできない環境 |
スケジュール | 12月16日(月)参加者向けオリエンテーション ~12月末: Tableau 試用期間 2020年1月1日~2月13日 本番環境にてデータ分析 2月13日 成果発表会 2月20日 審査発表 3月5日 カンファレンスにて表彰式* |
2)小売部門:
対象データ | ・トライアルカンパニー社の購買履歴データ ・クレオ社の生活者催事アンケートデータ ・NTTタウンページ社の企業データ ・アーガイル社のSNSデータ ・気象協会の気象データ ・オープンデータ(参加者任意) ※データは調整中につき変更の可能性があります。トライアルカンパニーの2年間分、20店舗のPOSデータを予定。上記のアンケートデータなどと組み合わせて、消費予測やトレンドなどの新しい発見や相関関係を見出してください。 |
環境 | AWS上に、BIツールとしてYellowfinを準備します。データはダウンロードできない環境。 |
スケジュール | 12月3日 参加者向けオリエンテーション 12月3日~2月13日 本番環境にてデータ分析 2月13日 成果発表会 2月20日 審査発表 3月5日 カンファレンスにて表彰式* |
*表彰式はJDMC年次カンファレンス「データマネジメント2020」にて執り行う予定です
主催者(JDMCエンジニアの会)より
JDMCエンジニアの会はデータの活用・分析を身近に感じて体験するコミュニティです。「データ活用・分析を身近に感じる」、「エンジニアの技術力向上」、「エンジニアのコミュニティ形成」を目的として、2017年から活動しています。これまで、技術講習会やハンズオンセッションをはじめ、オープンデータを利用した実際のアプリ開発、公的団体が開催するデータ活用アイディア募集コンテストへのチャレンジを試みるなど、積極的に活動してきました。
コミュニティのお約束事は、データ分析に触れて、楽しくデータ活用を体験してみよう!です。メンバー各人が自分なりに楽しんで何らかの体験や成果が出せれば、それが今後の成長につながると考えていました。今回のコンテスト企画は、複数企業から提供いただいた実データを扱いますが、発足当初では難しい活動であったと思います。メンバー各人が経験と実力をつけ、コミュニティ自体も成長できたためだと思います。また、JDMC会員の期待や応援があってのことです。
今回の、実データを使ったコンテストを実施するに至っては、情報保護やセキュリティなど多くの課題がありますが、ひとつずつ話し合いと周到な準備をしてきました。提供データやオープンデータなどを組み合わせたビジネス案を検討していく、また、検討だけでなく、アプリ化や実証実験に進めそうな案件があれば積極的に提案する良い機会だと思います。楽しむ!ことを大前提として、大いに実力を発揮していただきたいと思います。
協力企業 (順不同)
【データ提供企業】株式会社トライアルホールディングス 取締役副会長 西川 晋二 様
データ分析コンテストにお声がけ頂きありがとうございます。
私たちトライアルグループは創業当初から「ITと小売業・流通業を融合させ、お客様の役に立つ」と言うビジョンを掲げて40年取り組んできました。(グループ紹介ページ https://www.trial-net.co.jp/company/retail-ai.html )そのなかでデータ活用が重要な要素となるわけですが、まだ十分に活用できているわけではありません。今回は私たちのデータ(ID-POS)だけでなく、協力企業様からもデータ(天気、催事、SNSなど)を提供して頂いています。それらを組み合わせコンテスト参加者に分析して頂くことで、お客様に還元できる新しい知見が発見できることを期待しています。コンテストの発表会を楽しみにしています。
株式会社トライアルホールディングス(https://www.trial-net.co.jp/)
【データ提供企業】 株式会社クレオ 生活行動研究部 関 智美 様
クレオ生活行動研究部からは、生活者の意識行動に関する2種類の調査データを提供させていただきました。「生活歳事アンケート」と52週の生活行動の変化を都道府県ごとにとらえた「地域暮らし調査」です。生活者の“買いたい”気持ちと行動は、どのような要素がどのように関連して構成されているのか。購買データに、気象、SNSのつぶやき、歳事・暮らしの行動など様々なデータを重ね合わせることで見えてくる、今まで常識だと思っていた生活者マーケティングの枠を超える新しい視点の発見を楽しみにしています。コンテストに参加させていただき、データマネジメントの可能性を実感しました。貴重な機会をいただきましたこと、感謝申し上げます。
株式会社クレオ (https://kreo.jp/)
【データ提供企業】NTTタウンページ株式会社
タウンページデータベースは、鮮度・信頼性とも高く、過去を含め大量のデータがあります。このデータを活用し、他のデータと組み合わせたり様々な視点で分析することで、新たな知見が得られ、価値ある情報を生み出せると考えています。今回の分析コンテストを通じて、新たな可能性を創出し、またそれらが社会的にも有益な情報となることを期待しています。
NTTタウンページ株式会社(https://www.ntt-tp.co.jp/)
【データ提供企業】 アーガイル株式会社 代表取締役 岡安 淳司 様
Twitterに代表されるSNS投稿データは、かつてのビッグデータブームを牽引し、マイニング分析の対象や、機械学習用の教師データとして注目されました。ブーム後の幻滅期を経て、個人情報保護観点で行動ターゲティング広告等が問題視されている昨今、SNSクチコミ投稿は、消費行動パターンの分析対象であると同時にそれ自体が購買行動を牽引する「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」として、マーケティング文脈で再度注目されています。今回は、API権限上の理由からまだまだ分析利用の事例が少ない、Instagramの「#暑い」ハッシュタグ付きデータをご用意しました。投稿日時・関連タグ(撮影物)・説明文などと他社様のデータを組み合わせた分析の可能性を自由に試していただければ幸いです。
アーガイル株式会社(https://argyle.jp/)
【データ提供企業】 一般財団法人 日本気象協会 防災ソリューション事業部 松本康児様
気象データの歴史を振り返ると、日本で最初の天気予報の発表は、1884年(明治17年)6月1日です。それから大正、昭和の時代では、天気予報は、生活情報、防災情報として活用されてきました。新たな希望を感じる令和の時代では、気象データは、経済情報の役割も担ってきます。このような中、エンジニアの会では、POSデータ、株取引データなどの多様なデータが集まります。この多様なデータと気象データがエンジニア皆様の知識で経済情報の新たな知見になることを期待します。
一般財団法人 日本気象協会(https://www.jwa.or.jp/company/)
【ツール提供企業】Yellowfin Japan株式会社(https://yellowfin.co.jp/)
【ツール提供企業】Tableau Japan株式会社(https://www.tableau.com/ja-jp)
【環境構築技術支援】マネージメントサービス株式会社(https://www.msc-inc.co.jp/msc/)
参加者の声
参加者A 【製造業 ITエンジニア】
日常業務でデータ分析に関わっていますが、新しい事業に想いを巡らせたり、本業以外のデータに関心をもつ時間が殆どありません。どの程度の力が発揮できるか未知数ですが、まずは楽しんでデータと向き合ってみたいと思います。貴重な機会を与えてくださったデータ提供企業様、JDMCエンジニアの会のリーダー各位に感謝いたします。
参加者B 【情報通信業 ITプロジェクトマネジャー】
上司に、社外のデータに触れる貴重な機会なので経験を積んでくるよう薦められてエントリーしました。成果がだせるかどうか未知数ですが、面白そうなデータが並んでいるので右脳と左脳を駆使して頑張りたいと思います。また、他の方々の成果発表も楽しみで、大いに刺激を受けたいと思います。
オリエンテーションの様子
参加者向けのオリエンテーションを12月3日にトライアルカンパニー社の会場をお借りして小売部門、12月16日auカブコム証券社の会場をお借りして金融部門編を実施しました。
当日は両部門のオリエンテーションとも分析コンテスト参加希望者が多数集まり、実データを扱って分析する期待感と結果を出せるか不安な思いと両方が感じ取れる会場の雰囲気となりました。主催者側からの一方的な説明ではなく、分析環境に関して、その場で参加予定者と意見交換し、構築環境にフィードバックするなど有益な時間となりました。データ提供企業からは、データの説明とコンテスト参加者に対する期待などもお話しいただけました。機密保持に関する参加同意書の説明もあり、合意の上署名いただかないと分析環境にアクセスするIDが払い出されないことも伝えられ終了しました。