日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【Vol.138】三菱ケミカル株式会社・村山 浩之さん Happy Data Governance! 迷ったときに立ち戻る、私たちのデータガバナンスチャーター

こんにちは。三菱ケミカル株式会社の村山と申します。

私たちの部門、データガバナンスグループでは、三菱ケミカル本体にとどまらず、海外子会社を含むグループ会社全体を対象としたグローバルなデータガバナンスの仕組みづくりに取り組んでいます。今回は、私たちが作成した「データガバナンスチャーター」とそこに込めた想いについてお話しさせてください。


●抽象的で、かつ正解がない! だからこそ欲しかった拠り所

データガバナンスグループは、データマネジメントの教科書とも言える「DMBOK」をベースに日々の活動を進めています。とはいえ、DMBOKは包括的であるぶん、抽象的に書かれている部分も多く、「で、具体的にうちの組織ではどうすればいいの?」と戸惑うこともしばしばです。

企業によって、事業の特性も組織文化もデータの使われ方も異なるため、データガバナンスにはこれが正解という決まった型がありません。そのため、教科書を読んだだけでは自社にどう適用すべきかがよく分からず、手探りで進めざるを得ないことが多いのです。

私たちも日々さまざまな判断を迫られる中で、「何か拠り所となる指針が欲しい」と感じるようになりました。判断に困ったとき、意見が分かれたとき、迷ったときに、みんなで立ち戻れる原理原則があれば、活動の軸がぶれずに済むはず──そう考えたのが、チャーターを作ることになったきっかけです。


●「アジャイルソフトウェア開発宣言」をヒントに

表現の仕方は、ソフトウェア開発の世界でよく知られている「アジャイルソフトウェア開発宣言」を参考にしました。シンプルな言葉で価値観や優先順位を示すあのスタイルが、複雑になりがちな私たちの活動を分かりやすく伝えるのにぴったりだと思ったからです。

せっかくなので、私たちのチャーターを少し紹介させてください。

データガバナンス チャーター
私たちは、データマネジメントの重要性を知っています。
データマネジメントは、データを価値あるデータ資産へ導きます。
私たちは従業員に対してデータ資産を利用した意思決定と価値創出を行うことの喜びや幸せを伝えます。
つまり、私たちはデータ資産の価値を伝える伝道者であり、またデータ利用者を正しく導くナビゲーターとして活動します。
私たちは、以下の5つの基本理念の実現に向けたデータガバナンスの仕組みを構築します。
・グローバルどこでも同じように扱えるデータ
・誰でもいつでも安全に利用できるデータ共有
・すばやいデータ提供
・わかりやすい思いやりのあるデータ
・ビジネスニーズへの貢献
このデータガバナンスの仕組みが三菱ケミカル株式会社のデータマネジメントの成功につながると信じています。
Happy Data Governance!


●「制限」ではなく、みんなを「ハッピー」にするための活動

チャーターを作る上で、最も大事にしたのは、前向きで分かりやすいメッセージにすることでした。データガバナンスというと「制限される、統制される」といった、どちらかというとネガティブなイメージを持たれがちです。

しかし本来は、データをきちんと整え、誰もが安心して使えるようにすることで、データを使う人たちや会社全体をハッピーにするための活動だと私たちは考えています。そんな想いと、ちょっとキャッチーな響きから生まれたのが、「Happy Data Governance!」という標語です。

また、チャーターの中では「データマネジメント」と「データガバナンス」の違いも意識して表現しました。DMBOK的に言えば、データガバナンスはデータマネジメントの中の一領域という位置付けになります。ただ私たちは、データマネジメントを「データを価値ある資産へ導く活動」、データガバナンスを「その活動が継続的に回っていくように旗振りやナビゲートを行う活動」として、両者を分けてとらえてみました。この違いをチャーターの言葉に込めています。


●データガバナンスには正解がないからこそ、企業の枠を超えた交流のきっかけに

ちなみに、こうしてDMBOKをコツコツ勉強してきた成果もあってか、いまデータガバナンスグループには、CDMP(Certified Data Management Professional)のPractitionerが2人、Associateが4人います。資格を取ることがゴールではありませんが、共通の知識体系を土台にして、チームで議論できる状態をこれからも大事にしていきたいと思っています。

正直なところ、私たちのデータガバナンス活動はまだまだ道半ばです。データオーナーやデータスチュワードといった役割・体制づくり、データガバナンスカウンシルのような意思決定の仕組みづくり、グローバルデータプラットフォームの構築、全社的なメタデータ管理の仕組みづくりなど、現在まさに試行錯誤しながら取り組んでいる最中です(マスターデータ管理にも取り組んでいた時期があったのですが、いろいろありまして……現在は一旦休止しています)。こうした一連の取り組みについては、改めて別の機会でご紹介できればと。

日々試行錯誤する中で判断に迷ったときは、このデータガバナンスチャーターに立ち戻るようにしています。チャーターがあることで、目の前の議論に振り回されず、「そもそも何のためにこの活動をしているんだっけ?」と思い出すことができています。

また、このチャーターに込めた私たちの想いを社内にも広く知ってもらうため、データガバナンスポータルという社内サイトでも発信しています。データガバナンスに対するお堅いイメージが少しでも和らいでもらえたらと、ポータルサイト自体も親しみやすいポップなデザインに仕上げました。

実際の画面をお見せできないのが残念ですが、明るい色使いやカラフルなイラストをふんだんに取り入れ、「Happy Data Governance!」という前向きなメッセージが伝わるよう、誰もが気軽にのぞいてみたくなる工夫を凝らしています。

冒頭でもお伝えした通り、データガバナンスの最適な形は、組織の文化や事業特性によって千差万別です。唯一の正解がないからこそ、自社の中だけで悩むのではなく、企業の枠を超えて多様な試行錯誤や工夫を共有し合うことに大きな価値があると思っています。

データガバナンスに取り組まれている企業の方、これから取り組もうとされている企業の方、ぜひ一度、意見交換や情報共有をさせていただけないでしょうか。私たちの試行錯誤が皆さんの何かしらのヒントになれば嬉しいですし、逆に皆さんの知見から私たちもたくさん学ばせていただきたいです。ぜひお気軽にお声がけください!

村山 浩之(むらやま ひろゆき)
三菱ケミカル株式会社 データマネジメントプラットフォーム部 データガバナンスグループ Chief Data Architect

ITベンダーにて、アーキテクトとして金融や製造業など幅広い業界のクライアントを担当後、2023年に三菱ケミカル株式会社に入社。現在はグループ全社におけるデータガバナンスの推進を行うとともに、グローバルデータプラットフォームプロジェクトのリードアーキテクトとして活動している。CDMP Practitioner(Data Governance, Metadata)を保有。

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