【Vol.60】帝国データバンク 北野信高さん、マスターデータ整備に指導的な役割を果たす「外部企業識別コード」 


colum_title

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、株式会社帝国データバンクの北野信高さんです。

マスターデータ整備に指導的な役割を果たす「外部企業識別コード」

企業名など個々の存在をマスターデータ化するのが「識別コード」

日本電気を「NEC」、キユーピーを「キューピー」、ニッカウヰスキーを「ニッカウイスキー」と微妙に異なる表記で顧客マスターに登録し、同一企業かどうかを識別できなくなってしまうのは「MDM(マスターデータ管理)あるある」のひとつでしょう。
国税庁の法人番号公表サイトで一番多い企業名は、「前(株)/後(株)」や法人格を考慮しなければ、「アシスト」で、1,121社にもなります。ちなみに「企業名」に限らず法人名としてもっとも登録が多いのは「八幡神社」で、4,849社もあります。*数値はいずれも2019年5月末時点。

また人名によく使われる「辺」という漢字がありますが、皆さんはこの漢字のパターンがいくつあるかご存知でしょうか?「邉」、「邊」はすぐに変換候補に出ますが、「邉」のパーツには「方」か「口」か、「自」か「白」か、「冖」か「宀」かなど、多くの組み合わせがあり、一説には65パターンにも上るようです。

これらの事実からわかるのは、「社名の文字表記だけで企業を特定するのは、きわめて困難である」ということです。こうした背景もあって、皆さんの会社では個別の企業を識別するためのマスターデータとして、「取引先コード」が導入されていることと思います。アルファベットや数字などの組み合わせで構成されたコードを、4桁や6桁、9桁などで管理しているのではないでしょうか。

なお、この取引先コードが重複した場合に発生する社内問題の数々については、この場では割愛しますが、「正しい意思決定ができなくなる」という点は共通です。

国や信用調査会社などによる、300種類以上の識別コードが現存

マスターデータとして活用可能な企業の識別コードは世の中に多種多様に存在しますが、世界中でどれくらいの数があるか、ご存じでしょうか。

国などの公的機関が管理するものとしては「法人番号」(日本)、「統一社会信用コード」(中国)、「VAT Number」(欧州)が知られています。また国内の信用調査会社等が管理するものには、「TSR企業コード」(東京商工リサーチ)、「TDB企業コード」(帝国データバンク)、「LBCコード」(ランドスケイプ)、「標準企業コード」(一般財団法人日本情報経済社会推進協会:JIPDEC)があります。

さらにグローバルコードでは、「BvD9ナンバー」(ビューロ・ヴァン・ダイク)、「D-U-N-S® Number」(ダン・アンド・ブラッドストリート)などが知られており、一説に世界には合わせて300を超えるコードがあるとされています。

外部企業識別コードが「真のマスターデータ」になるためには?

システム・リプレースなどで自社の顧客マスターを整備する際には、上に挙げたような外部機関のコード導入を検討することがあります。その際には、自社や各機関およびコードの特性を踏まえて選定していくことになりますが、法人番号のような国が管理するコード、または民間のデータベンダーのコードのいずれを採用するにしても、世の中で活動するすべての法人に対して、網羅的に発番・管理できるわけではありません。

企業は今、この瞬間にも新たに生まれており、各機関の発番までのタイムラグとその間に重複などが起こる可能性は避けられないでしょう。

また、必要性の議論はされていますが、個人事業主までを網羅・公開している国内機関は、今のところ存在しません。「売上」、「従業員数」、「評価格付」といった属性情報は外部機関のコードと接続すればまかなえます。しかし、「他に重複するもののないユニークな値」という意味においては、外部企業が提供する識別コードは不完全と言わざるを得ません。このため真の意味でマスターデータにはなり得ず、コード統合時において自社の取引先コードの指導的な役割を担い、運用時に補完的な役割を担うに過ぎないと私は考えています。この点については、今後も継続的に議論し、解決していくべきでしょう。

単なるIT導入でなくビジネスのデータ基盤整備として取り組む

マスターデータとして企業識別コードの整備が終わったとしても、皆さんの会社では今日も営業パーソンが営業活動を行い、調達部門が新たなサプライヤーを開拓して、新たなコードの発番が必要になります。

JDMCの「データマネジメント概説書-ビジネスとITをつなぐ-データマネジメントとは-」は、 データマネジメントの成功のポイントとして、「企業/組織全体に関わることが多い」ことを十分に意識して、その上で「ITの導入ではなく、組織活動として取り組む必要がある」と説いています。

その意味で、データマネジメントを成功に導くためには、外部企業識別コードの導入をゴールとするのではなく、組織のビジネスや活動を根底から支える情報基盤として、不断に維持・整備し続けることが何よりも重要です。そのためには、事業部門と情報システム部門が日頃から協力し合い、組織全体の活動として取り組む姿勢が不可欠だといえるでしょう。

 

北野 信高 (きたの・のぶたか)
株式会社帝国データバンク 営業推進部 営業開発課

1978年、大阪生まれ。2000年、帝国データバンクに入社。調査部門で延べ2,000社の信用調査業務を行う。その後、本社営業推進部に異動、与信管理担当者・データ管理者延べ1,000名以上と面談をし、実務上の知見を蓄えてきた実績から「危険な会社を見分けるポイント」「データ利活用」に関する講演・研修実績豊富。現在は、ラージアカウント向けの課題解決サポートを主な活動としている。