日本データマネージメント・コンソーシアム

会員コラム

【Vol.33】逸見光次郎氏「ネット販売におけるデータと、そのマネジメント」

JDMC会員による「リレーコラム」。
メンバーの皆さんそれぞれの経験・知見・想いをリレー形式でつなげていきます。
今回、バトンを受け取ったのは、キタムラの逸見光次郎さんです。

ネット販売におけるデータと、そのマネジメント

 
「データ」と言われて私が真っ先に思い出すのが、ネットで本を販売するための商品マスタデータです。学生時代、本を読むだけではなく、書店のアルバイトで接客販売する楽しみを覚えて1994年に三省堂書店に入社。その後、大型書店が近くにないなどで好きな本が入手しづらい日本中の読書愛好家が本を入手しやすくなるよう、ネットでの販売を模索しました。1999年にソフトバンクに転職して、ネットで本を探して注文し、宅配もしくは最寄りのセブン-イレブン受取ができるイー・ショッピング・ブックス(現:セブンネットショッピング)の立ち上げに関わりました。
 
その時に直面したのが、まさに「ネット販売用の商品マスタデータ」だったのです。本は出版社が取次(卸)に見本を入れた時点で、基本的なマスタデータが生成されます。JANコード、売価等、店頭販売や流通に最低限必要な情報が入ったデータです。しかし、ネット販売では店頭のように実物を手にとることができず、表紙画像や中身の紹介文といった“付加情報”が重要です。今では当たり前のレコメンドやユーザーレビューもこのときは普及しておらず、この付加情報をどうやって作り、集めるか。これが私の最初の仕事でした。
 
最初に卸のデータベースにあった表紙画像は2万点強、流通している本は50万点以上。差分となる48万点近い表紙画像データをいったいどうやって集めるのか、途方にくれました。何とか卸の担当チーム、出版社とで調整を行い、「表紙画像を販売するための広告情報としてのみ使う」と、著作権をクリアした形で利用することの許可が下りました。そうして、新刊本については卸側でスキャニング、既刊本については随時出版社側からデータ納品もしくは卸側に依頼する形で表紙画像データが増えていきました。
 
今ではネットで検索して本の表紙画像が出てくるのは当たり前ですが、これは、1999年から2000年にかけて、関係各社諸氏の協力によって生み出されたものなのです。その後に移ったアマゾンでも、この恩恵(笑)を受けていたと思っています。
 
一方で、中身の紹介文はもっと大変でした。当初は毎朝卸会社に出向き、250~300点の新刊見本を見て、売れそうな約50点をピックアップ、2時間ほどでその紹介文を作成し、データベースにアップしていました。発売後、しばらくすると書肆(しょし)データベース作成会社から、いくつかの内容紹介文が出来てきます。これを混ざらないように、かつデータベースの著作権がわかるように、各データフィールドに制御しながら流し込んで画面表示できるようにします。これらが私にとって最初の「データマネジメント」業務でした。
 
その後、イオンではネットスーパーの商品マスタの構築に携わりました。この時には「ソースマーキングJANコード」と「独自JANコード」への理解を深めました。また、各社共通で行っていたことに、売上・利益のPL管理と、ネット販売ならではの「PV(ページビュー)数」「UU(ユニークユーザ)数」などの数値データ管理で、今で言うBI(ビジネスインフォメーション)を作る業務がありました。データが正確でなければならないのはもちろん、経営者が見やすいフォーマットで提示し、変化に気づいてもらえることが何よりも重要でした。
 
現在勤務するキタムラでは、「画像データ」というさらに巨大なデータマネジメントに関わることになります。こうして振り返ってみると、新しいことに取り組み続ける中で、常に「データ」とその「マネジメント」にも取り組み続けていたのだと気づかされました。コラムの依頼を頂戴した時には正直、何を書けばよいのやらで途方にくれましたが(笑)、こんなに身近だったとは! これからも、実務の中でより深く、「データマネジメント」について考えていきます。
 
 
逸見 光次郎(へんみこうじろう)
株式会社キタムラ 執行役員 経営企画 オムニチャネル(人間力EC)推進担当

1970年東京生まれ。学習院大学文学部史学科卒。
1994年、三省堂書店入社。神田本店・成田空港店等勤務。1999年、ソフトバンク入社。イー・ショッピング・ブックス社(現:セブンネットショッピング社)立ち上げに参画。
2006年、アマゾンジャパン入社。ブックスマーチャンダイザー。2007年、イオン入社。ネットスーパー事業の立ち上げと、イオングループのネット戦略構築を行う。
2011年、キタムラ入社。執行役員 経営企画 オムニチャネル(人間力EC)推進担当。店舗とネットの更なる融合「人間力EC」を進める。
 
 

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