第1回:JDMCとの出会いと願い

2012-07-24

JDMC運営委員/伊阪コンサルティング事務所 代表 伊阪哲雄氏

 

筆者がJDMCに出会ったのは、2011年春、JDMCの設立準備会に招聘されたことがきっかけだった。大手企業ITプロジェクトのコンサルティングに多数携わってきた経験から、かねてよりこのような業界組織の必要性を強く感じていたので強く賛同し、積極的に参加することにした。

 

筆者は1970年代初めより40年以上、データマネジメントの分野に携わってきた。当初はデータ格納時の性能問題やストレージの障害対策、90年代に入ってからはデータ設計やモデリング、最近10年ではデータ統合、特にMDMとデータガバナンスの実装といった具合に、関与する領域は時代と共に変遷した。だが一貫してこの分野に携わってきたことは事実で、その立場から言えば、今も問題は山積し、多くの皆さんが感じているように、問題は増える一方にある。なぜだろうか。

 

それは、データマネジメントこそが、さまざまなIT活用の中でも本質の1テーマであり、活用が広がると共に問題も広く、深くなっていくからだ。今日では、企業の枠、ベンダーとユーザーの枠、ひいては国の枠を超えて解決を図らねばならない問題が山積しており、ここにJDMCの存在意義があると強く思う。

 

ここで、筆者が関与した米国事例を1つ紹介したい。2000年頃、米国のデータクレンジング・ソフトウェア・ベンダー各社は、この市場が想定よりも拡大しないことに頭を痛めていた(ご存じの方も多いと思うが、データクレンジングとはデータの誤りや重複などを抽出し整理する作業のことである)。そこで各社が数万ドルずつ出資して、IT調査会社にレポート作成を依頼した。目的はこの市場の存在とソフトウェア・パッケージがいかにユーザー企業にとって有益なものであるかを認知させ、ユーザーの自社開発ソフトよりも多機能で効果的であるかを認知させることにあった。無償で配布されたそのレポートは、膨大な件数がダウンロードされてユーザーに浸透し、市場形成に成功した。

 

JDMCが目指しているのは、この事例のようにレポートを発行して製品の価値を周知するのみならず、ユーザーとベンダーが協力し合って互いの利益のために積極的に活動することである。どんなに力があるベンダーあるいはユーザーでも、単独で何かをやろうとすると限界がある。それがJDMCのような組織が存在するべき理由だと思う。

 

国内のIT業界は依然としてシステム開発志向が根強いが、欧米では1990年代後半には、スクラッチベースの開発はほぼ消滅しており、その分のリソースをデータ活用を含めたデータマネジメントに大きく振り向けている。活動を通じて、国内のユーザーとIT事業者の発想の転換を促すのもJDMCの大きな役割の1つである。企業が個別に啓蒙を行うよりも、データマネジメントへの取り組みが成熟している欧米の動向をテンプレートとして業界一丸となってその必要性を訴求し、発信するほうが効率的・効果的だと筆者は考える。

 

また、ユーザー企業の多くはデータマネジメントの必要性を概ね理解しているが、ソリューションという見方からすると、先進技術や先進事例にうまく出会えていないのが実情だ。一方、ソリューション提供者としてのITベンダーはソリューションの提供に必要な技術とノウハウを蓄積しているものの、ユーザーへの効果的な訴求ができているとはいいがたい。そこで、JDMCのような業界組織が共通の場を設定することで、気づきえない事項の発見が双方ともしやすくなる。これもJDMCの大きな存在価値になろう。

 

JDMCの活動に1年間参加したが、競合企業同士が和気藹々と活動している姿を見たのは、日本では筆者の長い経験の中でも初めてであり、大変素晴らしい。主たる目的を業界の健全な形成に置き、競合企業同士が切磋琢磨し、自社の技術蓄積と利益の向上を狙うそのスタンスから、やっと日本のIT業界も欧米のそれに近づきつつあるように思える。現時点での活動は国内が中心となるが他業種の事例に見るまでもなく、今後はグロ-バル化への取り組みも求められるだろう。筆者の実務体験を、JDMCの活動に貢献したく願っている。

 

次号からは、筆者が考えるデータマネジメントの視点と、10年以上参加している米国の各種カンファレンスからの問題提起をはじめとする海外動向、問題に対するユーザー視点での解決策の提言などを行う。

2012/6/20

─ 伊阪哲雄氏プロフィール ──────────────────────

 

データマネジメントを専門とするITコンサルタント。1970年、大手コンピュータメーカーに入社して以来、一貫してデータモデリング/設計やデータクレンジング、データ統合、マスターデータ管理、データガバナンス組織、人材育成に関わる支援を行ってきた。特に通信業界、医薬業界や、金融業界のデータマネジメントに詳しい。米国など海外の事情にも通じ、例えば米MDM Instituteが主催するカンファレンスには毎年欠かさず参加している。e-mail: isaka@isaka.com



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