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JDMC 「データマネジメント2012」 ユーザーセッション500字レポート特集

去る2012年3月7日(水)、JDMC主催「データマネジメント2012」が成功裏に終了しました。そこで発表された13のユーザ企業の概要を、JDMC運営メンバが500字でレポートします。

カンファレンス自体に参加できなかった、他のセッションにも興味があった、など色々な感想がありました。ご参考の一助になればという思いを込めています。
データマネジメント2012  http://www.seminar-reg.jp/jdmc/dm2012/

(本文の全写真撮影;的野弘路)

会場風景(その2)

 セッション<A-1>
題目: 「楽天におけるスーパーDBの活用事例、およびビッグデータへの取り組み」
講演者: 楽天株式会社 景山 均 氏

楽天経済圏として同社の提供する全てのサービスを一つのIDにより取り扱えるようにする試みと、その活動を支えるスーパーDB(DWH)、および最近話題に上るHadoopを用いたログ分析活用の実際について、実例を交えながら説明があった。流行に乗って「何でもかんでも」を行うということではなく、従来やりたくてもできなかったこと(実際的なログ活用など)を、リーズナブルに実施してゆくことが同社の方針であることを、景山氏は強調した。

具体的な例として、顧客の属性に加えて独自の行動変数・地理統計なども含めたクラスタリング分析を実施していることが挙げられた。一方で個人情報の観点でセキュリティ分野も重要な取り組み対象であることも補足された。利用者のアクセス媒体(PCかモバイルか等)に応じて、色々な異なるアプローチを工夫して実施していることを再認識できる内容であった。

データ活用の目的は、如何に利用者に同社サイトの魅力を訴え、サービス活用度を上げてもらえるかということに重点が置かれるが、加盟店に対しても満足度を提供するための工夫が必要である。また担当者がマーケティングを目的に行うデータ分析内容やアプローチを、社内横展開する方法を深めることが、これからの取組み課題として挙げられていた。

分析を通じたアクション実施による効果も具体的な数字として紹介されたが、国内サイトの運営に限らず、海外への積極的な展開を行おうとする同社のデータ活用への取組みは、セッション参加者への大きな刺激となったに違いない。

(中岡記)

セッション<A-2>
題目: 「業務近代化の変遷とマスターデータ管理の取り組みについて」
講演者: 株式会社東京証券取引所 坂本 忍 氏

東京証券取引所(以下、東証)のシステムといえば,今は膨大なデータを処理しているという実態があるが、当然ながら最初からそうだったわけではない。当初は紙で取引していたものが、技術の進歩や株式市場の高度化に伴って発展してきたものだ。

東証ではホストによるシステム化、更にはオープンシステム化と発展していく過程で、データ管理に関する問題が大きくなってきた。この問題とは、データの標準化が図られていないこと、データ連携に手間がかかる等、データマネジメントにおけるごく一般的に取り上げられる課題ばかりだ。正直、東証でさえもデータに関してこのような問題を抱えていたというのは驚きであった。

これらの問題を解決すべく同社は、eDIC(enterprise Data Integration Committee)を設立した。eDICの推進するプロジェクトでは東証EDM(Enterprise Data Model)を定義し、このモデルを軸にして強力にデータ管理を進めていった。この結果、業務や部署にとらわれない最適化やデータ全体の正確性・信頼性の向上等につなげることができた。これが今日の東証システムがパフォーマンス要求に対応できている一因といっても過言ではないと思われた。

このようにデータマネジメントにおいて一定の成功を収めたように見える東証だが、「データマネジメントは効果が見えにくいし、続けていくのが難しい」と坂本氏は言う。一時的にデータを整理することはできても、それを続けていくことに難しさがあると感じた。

(樋口記)

セッション<A-4>
題目: 「eBayの分析プラットフォームの実際 メタデータとアプリケーションを中心に」
講演者: eBay  Alex Liang 氏

eBay社は世界最大のオークションサイト運営で知られ、50,000以上のカテゴリ商品を取り扱っている。その日常活動の陰では数十ペタバイトに及ぶDWH(分析基盤)が背景にあり、日々7,500人以上の分析担当ユーザーが利用していることを紹介した。情報と事実に基づくアクション実施と、得られた知識を「e-サイト」の運営に生かすことが目的である。今回は、データマネジメントに絡めた話題として、この情報によるビジネスの運営クローズループを効果的に回すために、様々なメタデータ利用が必要であることを語った。そこではメタデータは、単なるFYI(参考まで)の情報ではなく、情報や知識を循環させるために必要な油の役目を果たしているということである。

メタデータの有用性を生む対象として、1.物理データフローの可視化、2.データの合理性説明、3.データ品質の監視、という三つの利用分野を取り上げ、事例を交えて説明した。メタデータ活用においては、リポジトリ化したデータモデルの管理と利用者へのデータ情報の提供、そしてそれを支援する各種レポートによる視覚化が必要になるということであった。特に、3の「データ品質の監視を通じたデータの信頼性維持・向上の試み」は、利用者が安心してデータや情報に依存した活動を行うために必要なものである。また、メタデータは上記の三つの分野だけに留まらず、DWHにおける利用者の行動分析、ETL面の各種監視など様々な利用にも使えることも付け加えた。

実際に日々活用しているAlex氏による力強い直言を通じて、将にメタデータは、得てしてFYI情報と受け取られがちな補助的な役割としてではなく、積極的に利用すべき「重要なデータ」であることを、改めて聴講者に感じさせる良い機会であった。

(中岡記)

セッション<A-5>
題目: 「ビッグデータのマーケティング活用事例 お客様とのEngagementを目指して」
講演者: ヤフー株式会社 鈴木 勝 氏氏

ヤフーの鈴木氏からは、同社の検索エンジンにおける検索ログ等、日々増加するWebログデータやショッピングの取引データなどを、どのようにマーケティングへ活用しているかの事例紹介が行われた。

ターゲティング、レコメンデーションなどビッグデータの活用方法や、匿名性と機密性を確保したデータ管理方法の紹介が行われた。商品の販路、広告効果など各部門で把握した効果と他部門で把握したい効果など、様々な角度からの分析を行うことで、分析精度の向上、そして顧客へベネフィットを提供するサービス化についての説明があった。また活用できる情報を社内公開することでデータ分析エキスパートのスキル・意識向上とビジネスバリューの向上も図るためのグループ取組みの方針にも触れた。検索履歴などからユーザプロファイルに基づく興味・志向性などを踏まえて、ターゲティングを行うことで実際にページビューなどを利用した定量的な効果測定結果例についても具体的な紹介があった。

現在、月間ページビュー496億ほどの巨大な検索エンジンを運営する会社としての企業努力、そして先進的な取り組みの一端に触れることができ、大変有意義な講演内容であった。

(橋爪記)

セッション<B-1>
題目: 「ソーシャルマーケティングとロイヤル顧客のエバンジェリスト化」
講演者: 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン  中澤 伸也 氏

ゴルフダイジェスト・オンライン(以下GOD)中澤氏の講演は、ソーシャルマーケティングを活用したプロモーションの手法に特徴がある内容だった。

具体的には、ゴルフダイジェスト社のFacebookを一人の人間として見立てて、そのファンを作りあげ、顧客との距離を縮める努力をするというアプローチだ。この部分の鍵となるのが「エバンジェリスト化」という考え方である。今や8人体制であり、GOD独自の視点から、さまざまな事業(サービス)内容をカバーし、ファンが飽きないバラエイティに富んだ内容を作り上げる土台になっているという。その努力の結果が2,000人の会員と、1,500の「いいね!」の達成として現れたとのことである。

しかし、ここまで来るには、何回ものトライ&エラーの繰り返しがあった。潜在顧客を開拓するために必要な点として、自分が「関心の無い事柄」であっても、親しい友人の情報に関連して話題として触れられれば、その人の興味喚起につながることが上げられる。特にBtoCの業界であれば、その可能性は高い。情報発信者に影響力が無くても、情報内容に影響力があれば拡がっていくことを期待するということである。
同社が目指したのは、「どうせ買うならあの店で!」と思ってもらえることである。当初開始2ヶ月で順調に「約6千人」のファン数に伸びたが、インプレッション数はむしろ減少するという結果が出た。これはファン数が伸びても、実際には見られておらず、情報が届いていないという現象と考えられた。そこでファンのリアクションの活性化をめざし、「感動を共有できるものは?」という視点でコンテンツを工夫した。どうすれば企業としての立ち位置を崩さず、同時にファンとの距離を縮められるのかを考えることに注力したという。

日本では「40%近くの企業は、未だ取り組んでおらず、この分野での専任担当者も一人もいないという企業が8割以上」という事実の中、同社のチャレンジにSNS取組みのヒントを得ることができた。

(村松記)

セッション<B-4>
題目: 「データマネジメント改革 流通企業の挑戦」
講演者: 株式会社トライアルカンパニー 西川 晋二 氏

トライアルカンパニーでは、近い将来に大量出店が計画されており、その急成長へIT部門としてどのように対応するかについて課題を抱えていた。具体的には、現状のシステム基盤における堅牢さや伝送スピード、情報アクセス統制やデータウェアハウスの処理能力の限界についてであった。そこで、効果的なIT基盤を整備している企業(それを西川氏は”SMARTユーザ企業”と呼ぶ)から、その手法を見習うことで解決の方向性を見出したという。

これによりその後整備したIT基盤は“SMART Computing Platform”と名付けられ、これにより戦略的なデータ活用を実施しているとのことである。ここにポイントカード会員の購買データを蓄積し、商品単位での商圏分析や予測モデルにより、どのような地域にどんな業態を出店すべきか、という分析を行っている。まさに今後の出店戦略の立案・遂行で不可欠なIT基盤となっている様子が伺われた。

同社では、事業拡大計画を実現するためのIT戦略の立案・実行を着実に遂行し、その戦略はデータ活用がベースとなっているという、まさに日本におけるデータマネジメント先進企業の1つであると感じた。

(北川記)

セッション<B-5>
題目: 「日産がIS/IT中期計画「BEST」で取り組んだこと プロセスとデータのマネジメントを中心に」
講演者: 日産自動車株式会社 柳沼 浩嗣 氏

「日産の情報システム部門はワールドクラスになる」という目標を達成するため、中期計画「BEST」に取り組んだ。その「BEST」の要素である「Enterprise Architecture(EA)」部分では、アプリケーションポートフォリオとして、ビジネス効果とコストによる4象限で整理し必要性を把握することで、不要なアプリを排除しコスト削減を実現したことを説明した。「DA(Data Architecture)」部分では、データマップ、概念・論理・物理データモデルでデータを定義し、ビジネスプロセスとも関連づけて管理するものとした。そして中期計画「VITESSE」では、ITの有効性や効率性をさらに高めるため、BOM(部品表)等の整備を進め、車種別の収益を把握できるようにする等、「BI(Business Intelligence)」をフルに活用していく取り組みをはじめたという。

このように同社は、EAに真正面から取り組み、そもそもの目的である、IT投資の効率化・最適化といった経営面での効果を着実に上げていると感じた。それはデータマネジメントの視点から見ると、「BEST」のDAでデータ管理の基礎をしっかりと固め、「VITESSE」でデータ活用に積極的に取り組むフェーズに入るという具合である。着実にデータマネジメントの取り組みを推進している代表的な企業であると感じさせる内容であった。

(北川記)

セッション<C-1>
題目: 「東京海上日動システムズが考えるデータ・マネジメントのあり方」
講演者: 東京海上日動システムズ株式会社 工藤 重己 氏

言うまでもなく東京海上グループでは、サービスとしての保険を提供しており、そのサービス内容や提供方法は多岐にわたる。このサービスを提供するための基盤となる情報システムを一手に引き受けているのが、東京海上日動システムズだ。

保険サービスを提供していく上で最も重要なデータは保険契約データである。これはもちろん契約や保険金支払い等の業務の主体となるということだが、そればかりではなく適切な料率を設定するために利用するという意味でも重要なデータである。料率の算出には、過去10年分の契約と事故データの他、国土交通省などの外部データも用いる。これらから出来上がる保険商品は2,500を上回るが、これは幅広いリスクを補償するためだという。

このように、データを重要なものとして捉える同社だが、データガバナンスに対する考え方はリスクベースである。それは以下の5つの要素を備える。①日頃からリスクを見える化する、②常時そのリスクを意識する、③事前にその対応策を考える、④リスクの発生を予防する、⑤問題発生時には速やかに対応できる、という点である。この中で工藤氏が最も重要だと認識しているのが、①のリスクの見える化である。見えないものは防ぎようがないという考えからだ。

物を売るビジネスではなく、「保険というサービスビジネス」において、データこそが商売道具の元であるということであり、システムや仕組みだけでなく、取組みマインドの面でもデータに対する意識の高さを感じた。

(樋口記)

セッション<C-4>
題目: 「“ソーシャルメディア・センサー”の金融活用を目指すPOCの実際」
講演者: カブドットコム証券株式会社 谷口 有近 氏

カブドットコム証券の谷口氏により、まず以下のような技術に対する見解が披露された。IT領域の技術動向(バズワード)を過去から時系列に俯瞰することで、「今後のITには、早く創って早く止める『早期→創造→測定→即断』が重要である。」その流れの中で、現在取り組んでいる、いわゆるビッグデータを活用した「株価の相関分析」の試みを説明した。それはブログやtwitterなどのソーシャルメディアで会話されている銘柄(企業)と、実際の株価が連動しているという相関が見えるのかどうかを確認したいという視点である。 それは世の中で取り組んでいる人は余り多くはない、新しい試みだと感じられた。

また、ビックデータ活用に向けた心構えについて、以下のような見解も説明した。すべての情報を調べる等の数理統計的なアプローチだけでは限界があること、調べるには一部銘柄の相関に注目するなどである。独自の観点でデータから見える傾向を捉えること、さらに、課題解決に向けて継続する強いマインド(意志)を持つことがビックデータ活用には不可欠である点を強調していたと思う。私に取っては心構えという観点で、印象的で参考になる講演であったと思う。

(橋爪記)

セッション<C-5>
題目: 「アスクルにおける商品情報管理のあるべき姿とは?」
講演者: アスクル株式会社 小野原 学 氏

同社が扱う商品点数は16万点と膨大な数であり、今年中には20万点に及ぶという。この商品情報管理(PIM:Product Information Management)の維持、運用の難しさは、この数字からも推測できる。

今回、アスクル社のデータマネジメントへの取り組み説明のポイントは、全ての業務が「カタログ中心」であったところを「商品情報ありきのスタイル」へ変換させたことである。同社は、会社の成長戦略に伴い、文房具のみならず、さまざまな間接材を取り扱うようになったが、それがこの大きな取扱数字に表れている。実際、ユニークで、わかりやすい商品名、タイムリーで正確な価格の登録・更新など、商品登録の鮮度、精度の登録には、膨大な時間と手間がかかるということである。カタログ販売中心であった際の同社の該当業務部門の人達の業務の50%は、年2回のカタログ発刊に費やされていたという。増え続ける膨大な取り扱い商品に関する商品情報の管理に対応するため、通年型の統合商品データベースを構築した。しかしその取り組みは決して成功したとは言えず、カタログを中心としてデータを正として運用したため、対応に問題がうまれたと原因の結論付けを行った。

これを見直すきっかけとなったのは、新規分野のメディカル部門がカタログ内容でなく、商品情報を中心としたデータを正とする運用を開始したことであった。この考え方を広げ、商品情報を中心にデータ運用を開始したことで、全てのデータ管理が円滑になり、PIMの効果が認知され、全社的なマスタデータのスムースな運用にいたったということである。マスタデータ整理の考え方の参考になる話題であった。

(村松記)

セッション<D-1>
題目: 「オムロン顧客マスタ統合事例から見るデータマネジメントの事業価値」
講演者: オムロン株式会社 海老原 吉晶 氏

同社では、2000年4月からCRMプロジェクトが開始され、2001年7月に本番リリースした。トップから示された、このプロジェクトの目的は『顧客の資産化』と『営業生産性の向上』の二つであった。これはすなわち、「同社にとっての顧客視点」を中心に情報システムを整備することであり、「同一の顧客を一意に識別して、部門間・プロセス間で、同様に識別できること」と、「顧客とのあらゆる接触履歴を記録し、部門間・プロセス間で共有できること」を実現するということであった。

こうした背景により、顧客データ統合の方針が固まった。方針の一つは「安定したデータ構造の顧客マスタ設計」であり、もう一つは「顧客マスタ(会社/個人)の一元管理」である。

同社の取組で特徴的なのは「データメンテセンター」の考え方である。統一顧客システムに情報を一旦集約した後に、人手を介して外部情報を反映し、それを精査したうえで各種業務システムへマスタ情報を返すのである。

その際のシステムへのデータ入力には、少なからず不十分な情報や不正確な情報が残りうる。これに対応する(すなわち業務部門の意識を向上させる)ために、「データメンテセンタ―」の担当者は業務部門との直接の対話をすることもある。単なるデータ整備だけでなく、業務の質を向上させる取り組みこそが、データ品質を向上させ、全社的な意識付けを達成する秘訣であると感じさせられた。

(岩崎記)

セッション<D-4>
題目: 「『お買場』のPDCAを支えるシステムとその導入プロセス」
講演者: 株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズ早乙女 雅洋 氏

同社は、システムの「開発」、「運用」のみならず、「企画」と「活用促進」を担う点で従来の情報システム子会社の活動と比べて、よりユーザー部門へ踏み込んだ活動をしている。本セッションの内容は、この特徴を如実に表したものであった。

三越伊勢丹グループの業務の大きな特徴は、どんな商品をどう売るかという観点である「MD(マーチャンダイジング)」のPDCAサイクルと、どんなお客様をターゲットとするかという観点での「顧客」のPDCAサイクルにおける、それぞれの詳細ステップがお互い同期していることである。すなわち、「顧客の構成を考え、顧客別の予算計画を立て、顧客単価を考える」際には、「商品の構成を考え、商品別の予算計画を立て、プライスラインを考える」ことが連動しており、「いつ誰に買っていただくかを考える」際には、「どこで何をお買い場(売場)に並べるか」などを一緒に考えている。これらは業務として当たり前のように一見思えるが、実行しようとするとデータの鮮度やマスタの成熟度など、様々な制約があり難しい。その中でも最も難しいのが、こうしたPDCAは百貨店における顧客接点の最前線、即ち同社でいう「お買い場(売場)」の人たちが情報を活用できることである。

これを実現するために同社では、高度な分析を簡単に行えるBIツールを開発した。しかもマニュアルを、単なるシステムの使い方という観点ではなく、「BIを使って○○が分かったら△△を見る」といった具合に「業務視点のマニュアル」という形にした。

このBIシステム実現にあたっては、システム部門が「業務の言葉を使うこと」が重要であった。これこそが7,500人を越えるユーザーにBIシステムが浸透している秘訣であり、三越という異なるカルチャーを持った企業を統合しても、伊勢丹とのシナジーを生み出すことができる秘訣なのだと感じさせられた。

(岩崎記)

セッション<D-5>
題目: 「グローバルテンプレート“OneModel”の構築~業務とデータ標準化の取り組みの実際~」
講演者: 株式会社資生堂  山口 隆 氏

「全社最適のためのグローバルのデータ標準化」、これは誰もが否定できないテーマであろう。このテーマに関連する、山口氏の「計画は誰にでもできる。だが、重要なのは現場・ユーザー部門も巻き込んだ形で実行することこそが改革の要である。」という言葉が心に残った。それは一筋縄ではいかないデータマネジメントの取り組みの難しさと、一方で苦難はあってもそれに取り組まなければならない必然性・切迫感を表しているものと理解した。

過去4年間の海外売上比率の伸びとグローバル情報システムに関わるIT部員数、新規投資における標準プロセス適用の割合などの説明があり、グローバルなビジネス展開にデータの標準化が不可欠であることが理解できた。

経営ビジョンから、ビジネスの見える化を実施することの意義をわかりやすく導き出すこと、スコープを明確に絞り込み期限を設けること、またグローバルとローカル部門の費用負担の考え方、“OneModel”を構築・維持するための勘所、海外ベンダーとやり取りする際の留意点など、非常に具体的で、多くの日本企業にとってモデルとなりうる示唆に富んだ内容であると感じた。

(大西記)

(本文の全写真撮影;的野弘路)

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