第6回 JDMC定例セミナー報告 

2012-01-16

2011/12/14 (水)16:00~19:00、中目黒GTプラザホール

講演1 「オムロン株式会社における顧客マスタ統合と活用の事例」
海老原吉晶  オムロン株式会社
インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー
グローバルサービスセンタ コンテンツコミュニケーションセンタ
WEBマーケティング推進課 主査

講演2 「グローバルビジネス時代のデータ統合・管理術」
保坂隆太 日本マイクロソフト株式会社
セントラルマーケティング本部マーケティングアナリティクスグループ
マーケティングアナリティクスリード

【参加者レポート】

JDMCの定例セミナーは単に講演を拝聴する場ではなく、講師と参加者が議論する場でもある。参加者には受け身でなく、積極的な姿勢が求められるが、その結果として非常に濃い情報共有の場になっている。Q&Aセッションでは、講師の代わりに参加者も回答者に回ることも多い。例えば、セミナー部会の委員であるカシオ計算機の矢澤篤志氏は「実際に参加していて、これだけ講師と参加者の距離が近く、参考になるセミナーはなかなかないと思う。ベンダー企業の講演も、非常に有意義だ」と語る。そのことを少しでも感じていただけるよう、2つの講演の要約を報告する。セミナーではこれらの講演の後、活発かつ講師が答えに詰まるほどの、Q&Aセッションがあった。しかし実際に参加しないと、その雰囲気は分かりにくいので、これは割愛する。ぜひ参加して体感していただきたい。

①顧客マスタ統合と活用の事例--オムロン
オムロンは産業機器事業における顧客データの統合について、「1990年代後半までは、販売キャンペーンのたびに顧客データを集め、DMを打つなどしていた。部署や担当者毎、システム毎に顧客データを管理していたのだ。しかし顧客から見れば、部署が違ってもオムロンはオムロン。そこでCRMデータマネジメントのインフラを構築し、循環的に顧客データを回していこうと考えた」。
今でこそ当たり前の考え方だが、CRMという言葉の定義さえ曖昧だった当時、どうすればそれを実現できるかは大きな問題だった。「顧客マスタをひとつにすることも考えたが、個々のDBは各々の業務インフラの一部なので止められない。ひとつのDBから供給するとなると、システム改造も必要。さらに顧客マスターを一つに固めてしまうと、将来的な環境変化に対応できないのではとの危惧もあった。そこで顧客のインデックスを統合。関係づけることにした」。各システムから、バッチ処理で統一顧客システムに集約。それをオペレータが見てチェックし、関連づけるやり方である。単純にデータを上書きするのではなく、修正履歴を取るなど“大福帳的”な考え方をとっている。
現在では、営業支援システム、コールセンター、Webサイトなどとも連携する。「例えば、Webの来訪者は、情報収集目的であり、すぐ購入に結びつくわけではない。しかし様々な顧客とのコンタクト履歴データをほかの顧客情報、例えば購買履歴などを総合すると、何が必要とされているのかが分かる。ある営業部では、新しい顧客履歴データが発生したら2日以内に何らかのアクションをするルールがあり、他のトリガーによる営業活動に比べて、数倍の商談発生率になっている。」
ここまで来るには苦労もあった。最初のハードルは営業担当者がSFAツールを使ってくれないこと。「当初は誰もコンタクト履歴などを入力してくれなかった。粘り強く意義を説明し、定着し始めたのは半年くらい経ってから。できる営業担当者は手持ちの案件が多いので積極的にツールを活用するようになった。すると周りが使うようになった」。
オムロン海老原氏は、企業や事業にとってデータは宝であり、だからこそ早く取り組むべきだと言う。「SFAやデータ統合などの仕組み作りは時間がかからないし、先行企業のまねもしやすい。だが10年にわたって蓄積したデータや活用の風土などは真似できない。これは非常に大きい。だからデータは一切捨てない。捨てたデータは2度と手に入らない面もある」。
「情報システムのROI(投資収益率)がよく問題視されるが、システムのリリース時点ではROIはゼロ。活用すればするほど増加する。それゆえROIはシステム化以前の段階では見えにくい。この点を、改めて認識する必要がある」と強調した。これを単に口頭で話しただけではない。独自に作成したビジュアルな資料を元にわかりやすく解説した。よく問われる「ITの価値」「ROI」に対する説明責任を、しっかり果たそうという意思が見える。いち早く取り組んできた講師ならではの自負が垣間見えた点だ。

②グローバルビジネス時代のデータ統合・管理術--マイクロソフト
従業員9万人を擁し、200以上の国と地域で事業展開する巨大IT企業、マイクロソフト。同社のデータマネジメントに関する取り組みも報告された。
意外なことに、マイクロソフトのシステムは必ずしもきれいに整備されているわけではない。「当社のシステムの作り方は、ある事業をするためにシステム作るというやり方。これを繰り返す。だからシステムは事業に応じてどんどん増えていく。まだ会社が小さかった頃のやり方を踏襲しているとも言え、結果、システムは数百以上、存在する」。
ではどんなふうに全体の整合性をとっているのか。データのあり方を中心に説明した。「ベースとなっているのがタクソノミー、つまりデータの意味やフォーマットの統一だ。あらゆるシステムに共通のタクソノミーを人事や販売、製品、顧客などのドメイン毎に定義し、新規にシステムを構築する場合はその定義に準拠することを徹底している」。ドメインは約70種。各ドメインには数10のデータ項目定義があり、各項目のフィールドもまた細かく定義されている。「結果としてシステムが違っても、データは個々のフィールドのレベルで統一される。これでビジネスのアジリティ(俊敏性)を確保している。必要なシステムをどんどん作りながら、データの分散を防止する仕組みである」。
このように聞くとシステム構築や活用に関して、自由放任にやっている印象だが、現実は違う。例えば顧客情報。「当社の場合、法人や個人など顧客は数億件になる。それに加えてBingやHotmailなどの顧客データ、アクセスデータもある。クラウドによりお客のプロファイルが取れるシーンが非常に多くなった。そのため、情報の管理には気を遣っている。たとえば10年前に日本だけのアプリは結構あったが、現在はゼロ。管理を一本化するためだ。だから日本で何らかのイベントやキャンペーンを実施する時でも、まずグローバルのシステムに情報を入れないとできない」。
その顧客情報の管理に関して、現在、新しい取り組みを進めている。「一人の人は、企業の社員であり、個人ユーザーであり、クラウドのサービス利用者だったりする。それぞれの顧客情報の統合はどこまで許されるのかを巡って過去2,3年、社内で大きな議論があった。結論は、お客は一人ひとりであり、統合管理の仕組みを作るべきである、というものになった」。現在、マルチプルデータマスタ(MDM) という名称で、疎結合によるデータ統合管理の仕組みを作っている。
2011年12月には、「データガバナンス」をテーマに、全世界のビジネス部門(IT担当者)による丸1日を費やしたミーティングが開かれたという。「集まったのは人事やオンラインサービス、購買担当、IT、ライセンス、ファイナンスなどの責任者。共通する問題意識は、”インフラは統一されているが、データはそうではない”というもの。これを解消して使えるデータを作り、ITの効果を最大化する方策を探った。日本時間では深夜2時から翌朝9時まで、熱い議論があった」。マイクロソフトは、こうした全社的な議論を通じて、データマネジメントを推進している。その姿勢から学べることは実に多いように感じた。

(田口記)



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